こんにちは、ゆる課長です。
この記事では中間管理職(ミドルマネジメント)の役割と仕事について解説します。
「君に管理職を任せたいんだ」
これから管理職を任されるあなたは、ある日上司にこう打診されるかもしれません。
その時あなたはどんな気持ちでしょうか?
「よっしゃ、オレに任せろ!」
「ようやく私の番が回ってきたわ!」
というポジティブな人もいるでしょう。
「いやー管理職ってなんか大変そう」
「管理職って面白くなさそう」
このような、ちょっとネガティブな気持ちになってしまう人も多いかも知れません。
私は後者のタイプでした。
それはこんな風に感じていたからです。
- 管理職をやっている人はあまり楽しそうに見えなかった。
- 今までマネジメントを経験したことがなかった。
- どのような事をすればよいのか分からなかった。
いきなり管理職って言われても、知識や経験がないので戸惑うのは当然のことかもしれません。
この記事では中間管理職(ミドルマネジメント)の役割や仕事内容をご紹介します。
読んでいただくと、管理職に対する漠然とした不安が少し解消されるはずです。
すでに管理職のあなたは、確認しながら読んでみてください。
中間管理職(ミドルマネジメント)の役割
中間管理職とは「中間」の名のとおり、企業の上層部と現場社員の中間にあたるポジションです。
経営層による意思決定を実現するために、実行における責任者として現場を指揮監督します。
また、現場からの意見を吸い上げ、経営層に伝える役割も担います。
- 上司と部下、社外と社内の橋渡し
- 組織目標の達成
- メンバーの育成
一般的な企業では部長、課長といった役職になります。
図のように中間管理職は「経営層と現場」「社内と社外」をつなぐ組織の要となる存在です。
そして、上司にあたる経営層は「トップマネジメント」
部下にあたる現場の監督層は「ロワーマネジメント」と呼ばれます。
トップマネジメントの役割
トップマネジメントとは、組織のトップである経営陣を指します。
組織の経営方針や、組織に重大な影響を与える意思決定がおもな役割です。
具体的には経営計画、組織戦略や事業戦略などの決定を行います。
組織の意思決定者であり、その意思決定に対するすべての責任を最終的に負います。
一般的には会長、社長、副社長、常務、専務といった役職になります。
ロワーマネジメントの役割
ロワーマネジメントは、役職についていない社員を管理する立場です。
中間管理職より、さらに現場に近いポジションです。
現場の社員による業務遂行をリードし、目標に向かってチームを引っ張るのがおもな役割です。
一般的には係長、主任、リーダー、チーフといった役職です。
中間管理職(ミドルマネジメント)の5つの仕事
中間管理職の仕事は、組織によって異なりますが、おおよそ共通しているものがあります。
「マネジメントの父」とも呼ばれる経営学者P. F. ドラッカーによると、最低限この5つです。
あらゆるマネジャーに共通の仕事は5つである。
P.F.ドラッカー『マネジメント』
①目標を設定する。
②組織する。
③動機づけとコミュニケーションを図る。
④評価測定する。
⑤人材を開発する。
①目標を設定する
組織目標の達成はマネジャーの大きな仕事です。
そのためには組織のビジョンやゴールを「部門の目標」→「チームの目標」→「メンバーの目標」に落とし込んで作り込むことが重要です。
「なぜ私たちのチームは存在するのか?」
「このチームの目的は何で、何を達成したいのか?」
「その目標を達成すると組織のゴールにどのように影響するのか?」
こういったことを明確にしながら、SMARTな目標設定をする必要があります。
②組織する
チームが目標を達成するためには、マネジャーによる組織づくりが欠かせません。
必要なリソース(予算や人)を確保し、十分に活用して、チームとして機能させなくてはなりません。
限られた時間やリソースの中で成果を上げるためには、メンバーの強みを良く理解し、その強みを最大限に発揮できる選択をすることが重要です。
③動機づけとコミュニケーションを図る
メンバーとコミュニケーションを取りながら、高いパフォーマンスを発揮させることもマネジャーの仕事です。
メンバーが高い生産性を保ちながら、生き生きと働いていく。
そのためには動機づけとコミュニケーションが欠かせません。
ただの情報伝達や、1回限りの動機づけでは不十分です。
継続的にコミュニケーションをとりながら、コーチとして伴走していくことが重要です。
④評価測定する
「目標設定」と「評価測定」この二つは切り離せないものです。
明確な評価基準を設けて、チームやメンバーのパフォーマンスを評価する必要があります。
- MBO(Management by Objectives=目標による管理)
- OKR(Objectives and Key Results=目標と主要な結果)
- 360度評価
- コンピテンシー評価
…など様々な評価制度がありますが、評価への納得感を高めるためには、マネジャーの働きが重要です。
「私はこんなに貢献したのに…」という評価への不満は、自己評価と会社評価のズレから生まれやすいものです。
目標設定の段階で曖昧さを極力なくしておくこと、進捗に対しての定期的なフォローとフィードバックが大切です。
⑤人材を開発する
メンバーを育てることもマネジャーの重要な仕事です。
マネジャーはチームの業績に責任を持ちますが、マネジャー個人がいくら成績をあげても「マネジャーとしての働き」は不十分です。
プレイヤーとマネジャーでは求められる仕事が異なるのです。
野球やサッカーの監督をイメージしてください。
監督がベンチで目立ち「私の戦術と采配で勝利できたのです」などとインタビューで語る監督がいたら、どうでしょうか?
…ありえませんよね。
メンバーがそれぞれの能力を発揮して、チームとして成果を出していく中で成長していく。
これができて初めて「マネジャーとしてよく働いた」と認められる。
マネジャーはこのことを念頭に置く必要があります。
中間管理職(ミドルマネジメント)に必要なスキル
では、これらの役割や仕事をこなすために、中間管理職に求められるスキルは何か?
ハーバード大学のロバート・カッツ教授の「カッツ・モデル」をご紹介しましょう。
カッツ・モデルは組織内の階層ごとに必要とされるマネジメントスキルを示しています。
組織人の成長と職位に応じて、マネジメントスキルのウェイトが変化することを提唱しています。
中間管理職(ミドルマネジメント)に求められるスキルは、ロワーマネジメントとの比較では、以下のような傾向になります。
- テクニカルスキルの割合は減少
- コンセプチュアルスキルの割合は増加
- ヒューマンスキルは同じく重要
中間管理職は3つのスキルをバランス良く備えることが求められます。
係長や主任からステップアップする際には、ヒューマンスキルとコンセプチュアルスキルを更に磨いていくことが重要になります。
中間管理職(ミドルマネジメント)に求められるヒューマンスキル
ヒューマンスキルは職位に限らず重要なスキルですが、中間管理職に特に求められるスキルは以下です。
- リーダーシップ
- チームマネジメント
- コミュニケーション
- コーチング
- ファシリテーション
- プレゼンテーション
- 傾聴力
- 交渉力…など
リーダーシップ
リーダーシップは役職に関係なく各自が持つべきものですが、中間管理職に求められるリーダーシップは「組織の目的や目標に向かって進むべき方向を示して導く能力」です。
どんなビジョンに対して、メンバーをどの方向に導くか?という点が重要になります。
チームマネジメント
チームマネジメントは、チームに必要なものの分析や管理をおこない、チームの活動を維持、促進するためのスキルです。
リーダーシップは「正しいことをおこなう(Do the right things)」に対して、マネジメントは「正しくおこなう(Do things right)」ことが重要になります。
コミュニケーション
中間管理職に求められるコミュニケーションは「単純にみんな仲良く」ということではありません。
上層部やチームメンバーと建設的に業務を進められるように、お互いに信頼関係を築き、言うべきことを言い合える関係性をつくることが重要になります。
コーチング
コーチングはコミュニケーション手法のひとつです。
相手の話にしっかりと耳を傾け、表情や態度などを観察しながら、相手の心の内側にある答えを引き出す力です。
メンバーの状況に応じて「ティーチング」と「コーチング」を使い分けて、メンバーの成長を促していくことが重要です。
ファシリテーション
ファシリテーションはミーティングや研修などの活動で、良質な結果が得られるように「舵取り」をしていくことです。
会議で多くの意見やアイデアを引き出したり、建設的な意見交換や判断をするために重要なスキルです。
それぞれの詳細については別の記事で深堀していきます!
中間管理職(ミドルマネジメント)に求められるコンセプチュアルスキル
コンセプチュアルスキルとは「概念化能力」とも呼ばれ、物事の本質を見極めて判断するためのスキルです。
組織全体を俯瞰して総合的な判断をするために必要不可欠です。
コンセプチュアルスキルを言語化すると様々な能力があります。
代表的なものを挙げると、
- ロジカルシンキング
- ラテラルシンキング
- クリティカルシンキング
- 多面的視野
- 柔軟性
- 受容性
- 知的好奇心
- 探求心
- チャレンジ精神
- 俯瞰力
中でも重要なのが以下の3つと言われています。
- ロジカルシンキング(論理的思考)
- ラテラルシンキング(水平思考)
- クリティカルシンキング(批判的思考)
ロジカルシンキング(論理的思考)
ロジカルシンキングとは、直感や感覚的に物事を捉えるのではなく、筋道を立てて矛盾や破綻がないように論理的に考えて結論を出す思考法です。
課題や問題に対して要素を適切に分解し、因果関係を正しく把握して、合理的な解決策を検討します。
ラテラルシンキング(水平思考)
ラテラルシンキングは、物事を多角的に捉えて、さまざまな視点から自由に発想する思考方法です。
既存の概念に捕らわれない発想で、独創的なアイデアを生み出すことを試みます。
木村尚義さんの著書『ずるい考え方』から「オレンジの分け方」を紹介しましょう。
答1:オレンジを4個ずつ配り、残りの1個を3等分に切り分けて与える。
答2:オレンジの重量を計り、残りの1個を総重量が同じとなるよう切り分けて与える。
答3:オレンジを絞り、ジュースにして3等分に分け与える。
答4:オレンジを4個ずつ配り、残りの1個の種を植えて、実ったオレンジを同じ数ずつ分ける。
答えとしては、どれも間違いではありません。
答1と2は、オレンジの形ありきでロジカルに導き出された答えと言えます。
答3と4は、形に捕らわれることなく発想することで独創的な答えになっていますね。
クリティカルシンキング(批判的思考)
クリティカルシンキングとは「批判的思考」と訳されますが、「その考え方はおかしい」「その論理は間違っている」と批判的に粗さがしをすることではありません。
結論に至るまでの分析や思考について「本当にこれで正しいのか?」という問いかけをし、客観的な視点で吟味し、より正しい論理につなげていく思考法のことです。
「前提を疑う」「思考の偏りに気づく」ことが重要になります。
管理職って色んな能力が必要なんですね。
私には難しそう。
大丈夫!始めから全部できる人はいないです。
管理職を経験していく中で少しずつ学んでいけばOKです。
しかし、始めから必要で最も大切な資質が一つだけあります。
マネジャーにできなければならないことは、そのほとんどが教わらなくとも学ぶことができる。しかし、学ぶことのできない資質、後天的に獲得することのできない資質、始めから身につけていなければならない資質が、一つだけある。才能ではない。真摯さである。
P.F.ドラッカー『マネジメント 基本と原則』
ドラッカーの有名な言葉ですね。
100点じゃなくていい、でも100%真摯に向き合う必要がある。
そういう事だと思います。
まとめ|役割を理解することがはじめの一歩
ここまでの内容をまとめます。
- 上司と部下、社外と社内の橋渡し
- 組織目標の達成
- メンバーの育成
- チームやメンバーの目標を明確にする。
- 必要なリソース(予算や人)を確保しメンバーの役割分担をする。
- メンバーとコミュニケーションを取りながら、高いパフォーマンスを発揮させる。
- 明確な評価基準を設けて、チームやメンバーのパフォーマンスを評価する。
- メンバーを育成する。
- テクニカルスキルの重要度はロワーマネジメントより減少
- コンセプチュアルスキルの重要度が増加する
- ヒューマンスキルは同じく重要である
「君に管理職を任せたいんだ」
そう言われたあなたは、きっと優秀な人です。
中間管理職の役割を理解して、怖がらずにはじめの一歩を踏み出して欲しいと思います。
この記事がそんなあなたのお役に立てたら幸いです。
私と一緒に中間管理職を頑張っていきましょう!